研究概要 |
VII型コラーゲンはanchoring fibrilの主要構成成分であり,皮膚基底膜と真皮との結合を強固にする。従ってVII型コラーゲン遺伝子(COL7A1)の変異は全身の皮膚粘膜に水疱を生じる栄養障害型表皮水疱症(DEB)を発症させる。1)皮膚線維芽細胞のCOL7A1はサイトカイン(TGF-β,TNF-α及びIL-1β)により発現が促進するが,表皮角化細胞におけるCOL7A1発現調節機構は不明である。そこで,ノーザンブロット法により解析した結果,TNF-α及びIL-1βは表皮角化細胞のCOL7A1の発現を抑制していた。一方,TGF-βは既報の如く発現を促進した。これらの結果からTNF-α及びIL-1βによるCOL7A1の発現調節機構は細胞特異的であることが示された。2)TNF-α及びIL-1βによる皮膚線維芽細胞におけるCOL7A1の転写調節機構を明らかにする目的で,COL7A1プロモーター領域の5'側を順次欠失させたルシフェラーゼベクターを調製してルシフェラーゼアッセイ法を行い,次いで各サイトカイン応答配列をプローブとしたゲルシフトアッセイ法を行った。その結果,TNF-αはRelA(p65)のホモダイマーがプロモーター領域の応答配列に結合して転写レベルで発現を促進していた。また,TGF-βとの間には相加作用も認めた。一方,IL-1βはNF-κBがエンハンサーのNF-κB結合領域,AP-1がサプレッサーのAP-1結合領域に結合して発現を転写レベルで促進していた。3)DEBはCOL7A1の変異によって生じる遺伝性皮膚疾患である。これまで100以上もの遺伝子変異が報告され,各変異はexon或いはexon-intron borderに認められる。しかしながら,プロモーター領域の変異は報告されていない。そこでプロモーター領域の変異を検索するため,以前PCR法及びheteroduplex analysisによって全く変異の検出されなかったDBE患者COL7A1を再スクリーニングした。その結果,全118exonとintron及びプロモーター領域の塩基配列をdirect sequencerで解析した結果,プロモーター領域に変異は認めなかったが,新規の遺伝子変異7687-6 C→Tが新たに同定された。
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