研究概要 |
I.毛乳頭細胞の単離および培養: 頭部の手術時に得られた皮膚片より毛乳頭を単離し、培養液中で培養した.まず継代培養した細胞が毛乳頭由来の細胞であることを証明する目的で、smooth muscle actinの発現を免疫蛍光抗体方およびにて調べた.両手法において、smooth muscle actin が培養細胞質に認められた. II.各毛乳頭細胞に与える神経ペプチドの細胞生物学的影響の検討: これまで皮膚に発現することが判明している神経ペプチドは、calcitonin gene-related peptide(以下CGRP),substance P(以下SP),vasoactive intestinal polypeptide(以下VIP)がある.今回の実験ではCGRP,VIP,SPにて培養した毛乳頭細胞を刺激してまず細胞増殖に与える影響、次に毛の成長を促すとされるサイトカインの分泌に与える影響を調べた.細胞増殖能はBromodexyuridine(Thymidine analogue)を用いたDNA合成率で検討した.対照としての用いた線維芽細胞は、CGRPおよびSP刺激によりそれぞれ80%,60%増加した.それに対し、毛乳頭細胞は、CGRPあるいはVIPにて刺激しても変化が認められなかった.むしろ、SP刺激は毛乳頭細胞の増殖を抑制する傾向を示した.SPは一般的にストレスに関係するといわれており、毛乳頭細胞の抑制はストレスと脱毛の関係に寄与している可能性を示した.また、いずれの神経ペプチドも毛乳頭のサイトカイン分泌に対する影響は少なかった. III.毛乳頭における細胞間接着因子の検討: 生検頭皮より毛組織を単離した標本を電子顕微鏡を用いて詳細に観察すると、毛乳頭細胞の突起間にgap junctionの構造とadherens junctionの構造が認められた.それぞれの細胞接着構造の構成蛋白であるconnexinとcadherinの発現を免疫蛍光抗体法およびウエスタンブロット法にて調べるた.In vivoにおいて両蛋白は細胞間に発現しており、これらの接着構造が毛乳頭の構造構築に重要であることが明らかになった.
|