研究概要 |
sphingosylphoshorylcholine(以下SPCと略す)はスフィンゴ脂質の一つで、生理的には生体内には存在しないが、1)線維芽細胞の増殖を促進させること、2)動物も出るの創傷治癒を促進させること、が知られている。そこでSPCの創傷治癒促進機序を明らかにする目的で、線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル収縮と細胞外マトリックス、特にファイブロネクチン(FN)の発現に対する影響を検討した。細胞は包皮由来のヒト真皮線維芽細胞を用いた。 (1)浮遊させた線維芽細胞を可溶化type Iコラーゲンと混合してゲル化させた。SPC依存性のゲル収縮は10uMを至適濃度として濃度依存性に観察された。PDGFやTGF-bの中和抗体は影響を与えなかった。さらにシグナル伝達関連物質のpertussis toxin、staurosporine、H7はゲル収縮を抑制し、genistein、tyrphostin A47は影響を与えなかった。SPCはGi protein coupled receptorとprotein kinaseを介して作用することが示唆された。 (2)細胞をSPCで処理し、FNのmRNAならびに蛋白レベルの変化をnorthern blotting,immunoblottingで調べた。その結果、SPCは濃度依存性に線維芽細胞FNのmRNAと蛋白量を増加させた。さらにSPCを添加した時に線維芽細胞が産生するTGF-b,PDGF-BB,IL-4,IL-6の量をELISA法で調べたところ、IL-6の分泌だけが亢進した。northern blottingでは、IL-6がFNの発現を増加させ、SPCによるFNの増加作用がIL-6中和抗体の添加により抑制されたことからSPCのFN増加作用の一部はIL-6によることが示唆された。 以上の結果からSPCの創傷治癒促進作用は再上皮化の促進だけでなく、創収縮や細胞外マトリックス合成の促進が関与していることが示唆された。
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