研究概要 |
目的:拡散強調像三次元不等方性コントラスト(3DAC)画像および拡散テンソル解析による白質線維の異方性の測定を健常人ボランティアと脳腫瘍例にて行い,その臨床的有用性を検討する. 方法:健常者5例と脳腫瘍患者19例を対象とした.3DAC画像はmotion probing gradient(MPG)を3軸方向に印可して撮像した拡散強調像のグレースケールを三原色のカラーに置き換え加算して作成した.拡散テンソルはMPGを6軸方向に印可して測定し,拡散トレース,拡散固有値および拡散異方性の指標(FA)を計算した. 結果:健常者全例で良好な3DAC画像を作成でき,頭尾方向に走行する錐体路や前後方向に走行する視放線などの神経線維を明瞭に抽出できた.腫瘍例では特に腫瘍と錐体路の関係について3DACの有用性を検討した.全症例において腫瘍と錐体路との位置関係を把握することが出来た.錐体路への腫瘍浸潤がない例では,錐体路が腫瘍により偏位している様子を明瞭に抽出できた.錐体路にT2延長域が及んでいる例では,T2強調像で同様な高信号に見えても,腫瘍の直接浸潤により錐体路が傷害されている部位と浮腫のみで神経線維が保たれている部位とを3DAC像にて区別できる可能性が示された. 白質線維の異方性の検討では,拡散テンソル解析による結果と3軸方向のみのMPGで得られた結果とを比較したところ,測定精度はテンソル解析の方が有意に優れ,特に腫瘍により神経線維が圧排されている例においては,3軸のみの測定では異方性を過小評価する可能性が示唆された.腫瘍例の検討では,拡散異方性をトレースやFAだけでなく,固有値を含めて解析することで,腫瘍の浸潤や圧排による神経線維の状態をより詳細に検討できることが示唆された. 結論:通常のMRI検査に3DAC画像や拡散テンソル解析を加えることで,腫瘍と白質線維の関係をより詳細に把握でき,より安全な手術計画を立てる上で一助となる情報を与えると考えられた.
|