研究概要 |
1.前年度までに確立したCTA, CTAPの手法を用いて,肝細胞癌の発癌過程における血行動態の変化を解析し,統計学的検討を行った. 2.病理学的分化度の異なる各種段階の肝細胞性結節86病変(Low-grade dysplastic nodule7病変,high-grade dysplastic nodule8病変,高分化型肝癌14病変,中分化型肝癌45病変,低分化型肝癌12病変)に対し,CTA, CTAPを施行し,腫瘍内の血行動態を観察した.切除標本上の全動脈数,既存肝動脈数,門脈数を病理学的に計測し,それぞれの結節/周囲肝組織比を算出,CTA, CTAPの濃染パターンと比較した. 3.腫瘍内血行動態は以下の5群に分類された.G-1(n=5)::CTA, CTAPで低吸収,G-2(n=13):CTAで低吸収,CTAPで等吸収,G-3(n=6):CTA, CTAPで等吸収,G-4(n=2):CTAで等吸収,G-5(n=60):CTAで高吸収,CTAPで低吸収.腫瘍内血行動態は病理学的分化度と有意な相関を示した.全動脈数比はすべての群で増加していた.一方,既存動脈数比はG-4,G-1,G-3,G-2,G-5の順に減少していた.病理組織所見との対比により,肝癌の進展において腫瘍内血行動態はG-1,2,3,4,5の順で変化することが示された. 4.以上の結果より,肝細胞癌の発育進展の過程において,多くの場合,門脈血流が減少する前に肝動脈血流の減少を生じることが示され,結節内門脈血流の変化に先行して生じる肝動脈血流の減少を血行動態画像で捉えることにより,結節の悪性度を予測しうることが示唆された.
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