研究分担者 |
森 宣 大分医科大学, 医学部, 教授 (20128226)
清末 一路 大分医科大学, 医学部, 助手 (40264345)
山田 康成 大分医科大学, 医学部, 助教授 (60244183)
堀 雄三 大分医科大学, 医学部, 助手 (70295187)
松本 俊郎 大分医科大学, 医学部, 助教授 (80219500)
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研究概要 |
当該研究期間内に22例の切除不能膵癌症例に対し選択的制癌剤動注療法を行い,その制癌剤の腫瘍への移行・貯留状態、ならびに生存率および生存率に関与する因子について検討を行った.治療前のCTでは22例中14例に肝転移が,10例に傍大動脈リンパ節転移が,7例に腹膜播種が見られた.動注の方法としては,11例では超選択的膵動脈注入にて,他の11例では選択的動脈注入を主体として行った.動注直後のCTでは制癌剤の腫瘍への強い移行貯留は22例中19例(86%)に見られ,うち9例では腫瘍の30%以上の領域に制癌剤の貯留が認められた.また,これらの強い制癌剤の貯留は超選択的動注群に多く見られた.治療後1ヵ月以内のCTでは13例で制癌剤の停滞部位に一致して腫瘍壊死による低吸収域が見られた.また,動注1〜3ヵ月後のCTではPR9例,NC10例,PD3例であり,腫瘍壊死の見られた群において有意に高頻度の腫瘍縮小効果が認められた.全体の平均生存期間は7ヵ月,1年生存率は21.9%であった.腫瘍への30%以上の制癌剤の貯留が見られた9例では平均生存期間は9.9ヵ月,一年生存率は42%と有意に生存率の延長が認められた.生存率に関与する他の因子としては治療前のCTにおける腹膜播種の有無(播種なし:平均生存期間8.3ヵ月),動注の方法(超選択的:平均生存期間9.5ヵ月)などであった.治療前CTにおける肝転移およびリンパ節転移の有無と予後との間に有意な相関は見られなかった.以上の結果より今後さらに多数例での検討が必要ではあるが,制癌剤の超選択的膵動注により腫瘍の部分的壊死効果ならびに腫瘍縮小効果が得られ,CTにて腹膜播種を認めない症例においては有意にその生存期間を延長し得ると思われた.
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