研究概要 |
脳におけるアミロイドβ蛋白質(Aβ: amyloid β protein)の蓄積がアルツハイマー病(AD : Alzheimer's disease)の病理学的プロセスの上流に位置することから,Aβの代謝機構の解明はADの病因究明の重要課題であり,その分解に関与する酵素群が次々と明らかにされつつある。一方,脳以外のAβ代謝に関しては,現在のところほとんど研究が行われていない。 本研究では、脳以外の各非神経組織(心臓,肺,肝,腎,脾,膵,小腸,皮膚)に,AβC末認識断端抗体,抗Aβ17-24抗体(4G8), AβN末断端抗体などにより陽性反応が認められたが,その反応は生化学的手法では確認されなかったことから,cross reactionの可能性が考えられた。 神経細胞内Aβの存在はすでにAβC末断端抗体を用いた研究によって明らかになっている。本研究でも4G8により陽性反応が得られており,これに呼応するものといえる。神経細胞内AβのN末については,今回の検索では明らかにできなかったが,このAβN末は(1)代謝を受けていない,(2)使用したAβN末断端抗体が認識する以外の箇所で断端になっている,などの可能性が考えられた。 血液中Aβの脳への移行は,少なくともラットにおいて30日間では起こらなかった。しかし,動物種,老齢動物,長期暴露によっては移行が起こる可能性があり,今後の課題である。
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