研究概要 |
赤芽球系造血細胞の増殖と分化を調節するエリスロポエチン(Epo)の受容体は、JAK2等のチロシンキナーゼの活性化を介してSTAT5やRas/MAPキナーゼ経路の活性化をもたらすことが明らかにされてきた。今回私たちは、Epo受容体によりチロシンリン酸化を受ける事を以前に報告したCrkLに関して検討を行い、CrkLはC3Gを介して、Ras/MAPキナーゼ経路とは別のシグナル伝達系路を活性化し、インテグリンの活性化による細胞接着亢進をもたらすことを見出した(Arai A.et al,Blood 93:3713,1999)。さらに、CrkLの機能に付き検討を行い、CrkLはEpo等のサイトカイン受容体によるRas・Raf-1・MEK・Erk経路を介してElk-1の活性化とc-fos遺伝子の発現誘導に至るシグナル伝達経路の活性化に関与しうることを見出した(Nosaka Y.et al,JBC 274:30154,1999)。また、C3Gにより活性化される事が知られているRasファミリーのRap1に関して検討を行い、EpoやIL-3の刺激によりRap1が造血細胞内で一過性に活性化されることを見出した。サイトカインによるRap1の活性化は、CrkLやC3Gを誘導的に過剰発現することで増強され、Rap1はTPAやCa ionophoreによっても活性化され、一方PLCγの阻害剤により抑制された。また、Rap1の活性化はβ1インテグリンを介した造血細胞の細胞接着と相関し、活性化型Rap1の発現によりβ1の活性化が認められた。以上の結果より、EpoやIL-3受容体はCrkL/C3GやPLCγを介してRap1を活性化することにより、β1インテグリンを介した細胞接着を誘導することが明らかにされた(Arai,A.et al.,J Biol Chem,in press)。
|