研究概要 |
BCL6遺伝子を責任遺伝子とする染色体転座(BCL6転座)は、濾胞性リンパ腫の5-15%、大細胞型B細胞リンパ腫の20-40%に認められる最も頻度の高い染色体異常の一つであり、免疫グロブリン遺伝子(IG)領域ばかりでなく多様な染色体領域(non-IG)を転座のパートナーとする。我々は、約300症例のB細胞腫瘍のDNAを、BCL6のMTC(major translocation cluster)プローブを用いたサザンブロットでスクリーニングし、約60症例にBCL6の再構成を認めた。これらのすべての再構成領域を独自に開発したPCR法を用いてクローニングし、半数はIG、残りの半数は多様なnon-IGを転座のパートナーとすることが明らかにした。我々がクローニングしたnon-IGパートナーは、TTF,H4histone,HSP89α,HSP90β,CIITA,PIM-1,TFRR,IKAROS,α-NACの9種類の遺伝子であるが、新たにIL-21Rがt(3;16)(q27;p11)転座におけるBCL6のパートナーであることを明らかにした。これらの遺伝子のプロモーターは、細胞周期、物理学的変化、種々のサイトカインによる刺激などによって活性化される。Bcl-6蛋白の発現が最も亢進する胚中心におけるB細胞の環境を考えると、これらのプロモーターと結合することによってBCL6の発現調節に異常をきたすことが容易に理解される。 次に我々は、BCL6転座の多様なパートナーが大細胞型B細胞リンパ腫の病態と関連するかどうかを検討した。その結果、non-IG/BCL6転座症例のoverall survivalがIG/BCL6転座症例のそれに比し有意に悪いことを見いだした(P=0.0440)。この結果は、BCL6転座が悪性リンパ腫の病態に密接に関連していることを示している。
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