研究概要 |
[はじめに]我々はこれまで主要な血小板増殖因子であるthrombopoietin(TPO)が骨髄ストローマ細胞から産生され、また血小板中に大量に含まれるTGF-bが骨髄ストローマ細胞からのTPO産生を促進し、産生されたTPOが巨核球のTGF-β1レセプター発現を高めることで結果的に血小板増血を抑制するという負の調節因子であることを明らかにした。しかしながら、本態性血小板血症(ET)患者では血小板数増加とその破壊により骨髄TGF-β濃度が高いにも関わらず巨核球増血は抑制されることなく過剰に認められる。そこで本研究ではその機序の解明を試みた。[方法]1.正常人およびET患者より骨髄を採取。TPO(100ng/mL),G-CSF(100ng/mL),EPO(2U/mL)存在下にそれぞれ培養し巨核球(CFU-Meg),顆粒球(CFU-GM),赤芽球(BFU-E)コロニー形成数を算定する。またTGF-β(0-1.0ng/mL)を添加培養しその抑制効果を検討する。2.上記培養day14にコロニー形成細胞を回収しtotal RNAを抽出。TaqMan RT-PCR法でSmad2,3,4,5mRNAの発現を定量的に解析する。発現低下を認めたなら、遺伝子導入にて補充し打ち消し実験を行う。 [結果]正常者巨核球コロニーはTGF-β(1ng/mL)添加で100%抑制された。ET患者の抑制率は45〜65%程度であった。CFU-GM,BFU-Eコロニー形成率は健常者、ET患者ともにそれぞれ平均30%、40%であった。正常者のSmad4mRNA発現はCFU-Megで最も強く認められた。またET患者CFU-MegのSmad4発現は健常者のそれに比較し有意に低下していた。また,ET患者骨髄単核球にSmad4遺伝子を導入するとTGF-βによるCFU-Megコロニー形成抑制が強く認められた。 [考察]ET患者CFU-MegではSmad4発現低下のためTGF-βによる増殖抑制から逸脱することが、血小板増多の一因となっていると考えられた。
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