研究概要 |
白血病発症の分子生物学的解析をテーマに研究した。、特に慢性骨髄性白血病(CML)の発症およびCMLの病期進展を分子生物学的手法により細胞レベルで解析・解明することを目的とした。主たる解析遺伝子は白血病細胞のc-kitおよびcalpastatin相同遺伝子である。近年癌抑制遺伝子とされるp51/p63遺伝子、bcl-2,bcl-x,DCC遺伝子も研究のテーマとして本研究に組み入れ、白血病細胞株を樹立し癌抑制遺伝子とされるp73遺伝子の解析も行った。 major bcr-abl融合遺伝子が大半のCMLで発現されているが、minor bcr-abl融合遺伝子あるいは非典型的なbcr-abl融合遺伝子を発現し、非典型CMLを発症してくることを明らかにした。Bcr 2 exonの消失した珍しいbcr-abl融合遺伝子を発見し、その発現する細胞株の樹立に成功した。 白血球増多が高度のCML症例でstem cell factor(SCF)のレセプターであるc-kit遺伝子に突然変異があることがわかった。この症例では発症およびCML病期進展にc-kit遺伝子の傍細胞膜直下のcodon 541および564に異常を示す。Ba/F3マウス細胞にこの異常c-kit遺伝子を導入し、その機能解析を行ったところtyrosin kinase活性に若干の亢進がみられこれが白血病発症、進展に関与していることを突き止めた。 p51/p63遺伝子もCML病期進展に関与し、異常となってくることが判明した。mRNAのisoformもp51-α,-β,-γが存在し、白血病細胞ではp51αの発現がほとんどであり現在機能解析中である。遺伝子変異解析では病期進展にDNA結合領域に点突然変異が集中していた。calpastatin相同遺伝子はなおその異常の機能を解析中である。
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