研究概要 |
本研究の目的は、腎の間質線維化の進展過程におけるmyofibroblastの動態を、組織極性を司るfrizzled遺伝子発現から検討することにあった。間質の線維化の実験モデルとして一側尿管結紮ラットを作成し、正常ラット(week 0)と尿管結紮後1,2,3,5週(week1,2,3,5)の組織を用いて抗α平滑筋アクチン(αSMA)抗体を用い免疫組織化学とin situ hybridizationによってfz-2mRNAの発現を施行し、連続切片または鏡像切片を用いてfz-2mRNAを発現しているmyofibroblast(=αSMA陽性)を検討した。Week2-3において有意に多くのfz-2mRNAを発現するmyofibroblastが認められ、week5においては減少傾向を示した。間質の線維化が進行する早期においてmyofibroblastの極性が,その後の進行に重要な関わりを持つ可能性を強く疑わせる所見である。ISHによる結果をさらに明らかにするために各組織よりtotal RNAを抽出しcDNA化した後にRT-PCRにてfz-2mRNAの発現を求めた。G3PDH mRNAについても同様に求め、fz-2mRNA/G3PDHmRNAを算出し各群におけるfz-2mRNA発現を定量的ではあるが比較したが、week2において最も強い発現が認められた。本研究によって腎の間質の線維化におけるmyofibroblastの出現の重要性とともに、そのmyofibroblastが組織極性を司るfz-2mRNAを発現することが明らかとなった。すなわち、線維化の進展にともなうmyofibroblastの出現は遺伝子レベルにおいて制御されていることが示唆された。今後は、この遺伝子レベルの操作によって線維化の進展がどのように修飾されるかを明らかにすべきである。
|