研究概要 |
新生仔ラットを低酸素や高温で前処置することにより、引き続く低酸素虚血負荷に対して脳が抵抗性を獲得する現象「低酸素虚血耐性」を報告した(OtaA,et al.Am J Obstet Gynecol1998;179:1075-8.、Ota et al.Journal of SGI2000;102-5)。 そのメカニズムとして脳血管内皮における熱ショック蛋白(HSP)72の発現が重要であることを見い出し(Ikeda T et al.Am J Obstet Gynecol2000:182:380-386)さらに、耐性獲得脳では、低酸素虚血による脳血管関門の破綻が、非獲得脳に比べてを内因性IgG染色を用いて明らかにした(Ikeda T et al.Brain Res Dev Brain Res1999;117:53-58)。 また、HSPと同様な内因性神経防御因子として、神経栄養因子の研究に着手した。新生児ラットの脳脊髄液中のNeurotrophin familyの濃度の推移をELISA法で測定した(Xia YX et al.Neurosci Lett2000;280:220-222)。また、神経栄養因子の一つであるglial cell-line neurotrophic factor(GDNF)のラット脳の発達期におけるGDNFの発現を報告した(Ikeda T et al.Int J Dev Neurosci1999;17:681-91)。さらに、7生日新生仔ラットの低酸素虚血脳障害に対して、低酸素虚血負荷後の投与でもdose-dependantに障害防止効果があることを明らかにした(Ikeda T et al.Acta Neuropathologica2000:161-7)。 以上の様に、低酸素虚血耐性現象を研究することから、内因性の神経防御機構を明らかにしつつある。これらの研究から、新しい胎児および新生児の脳障害に対する治療法を生み出すことができると考えている。
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