研究概要 |
ホスホジエステラーゼ3B(PDE)は脂肪細胞に特異的に発現し、インスリンの抗脂肪分解作用を媒介する。脂肪細胞におけるPDEの活性化の増強は、血中遊離脂肪酸(FFA)の低下を介してインスリン抵抗性を改善する事が予想される。申請者らは、平成11年度、インスリン抵抗性肥満糖尿病のKKAyマウスにおいて、低下した脂肪細胞のPDEの発現が、インスリン抵抗性改善薬により増加し、FFAの低下と共にインスリン抵抗性が改善する事を見出した(1)。平成12年度、PDEの発現の増加は、in vitroでは3T3-L1細胞が脂肪細胞へ分化誘導後の早期に認められることをreal time RT-PCRにより確認した。次いでクローニングしたマウスPDEの5'領域について2kbまでの塩基配列を決定しコンピューター解析した結果、C/EBPなどの脂肪分化に重要な転写因子の結合部位があることを見出した。更に、転写開始点を決定し、プロモーター活性を解析するためにルシフェラーゼのレポーターコンストラクトを作成した。トランスフェクションにより、2kbまでの領域は分化前の3T3-L1細胞においてプロモーター基礎活性を有する事を確認した。更に脂肪細胞への分化誘導によりプロモーター活性が増強されることを確認した。従って、この領域内に脂肪分化によるPDEの転写活性化に重要なDNAエレメントの存在が示唆された。今後、インスリン抵抗性改善剤の新たな標的としてDNAエレメント及びその結合因子の同定を進めていく予定である。文献1)Tang Y.,Osawa,H.,Onuma,H., et al.Improvement in insulin resistance and the restoration of reduced PDE3B gene expression by pioglitazone in adipose tissue of obese,diabetic KKAy mouse.Diabetes 48:1830,1999.
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