研究概要 |
大腸癌に広く発現する42-46KDaの糖ペプチドを認識するヒト型モノクローナル抗体SK1は、in vitroにおいて癌細胞の運動性を抑制し、臨床的に有用な抗体である可能性がある。本研究期間中、以下の検討をおこなった。(1)癌に対する反応特異性が高いヒト型モノクローナル抗体を新たに4株、作成した(投稿準備中)。(2)精製したSK1を用いて第一相臨床試験を行った。対象は他の治療法にて効果を認めなかった再発大腸癌患者で、SK1を3回から7回、静脈内投与した。一例に投与後37度台の熱発を認めた以外、副作用はなかった。抗体量30mgまででは残存腫瘍の縮小は認めなかった。しかし投与後の血中CEAの上昇率は投与前に比べて有意に抑制され、50%生存期間は15ヶ月であった。(文献1,4)(3)新たに、SK1のマウス抗イディオタイプ抗体(Ab2)とウサギ抗体イディオタイプ抗体(Ab3)を作成。これら抗体を用いた競合試験により、9名中4名でSK1に対するIgG型の血中抗イディオタイプ抗体価が、治療後から上昇したことを示した。(文献1,4)(4)抗体の認識抗原を含む54のアミノ酸配列を解明した。抗体はこのアミノ酸のうち、20merの部分を認識した。このペプチドにより大腸癌に対する液性ないし細胞性免疫が惹起されるか否かを検討中である。(文献3)(5)癌抗原、癌細胞を免疫原とし、in vitroでCD8陽性細胞障害性Tリンパ球(CTL)を誘導。これを治療に用い評価した。自己癌細胞に対する細胞障害活性を有するCTLが一度でも誘導できた場合、腫瘍の縮小、マーカーの低下など、臨床効果を認め、効率良い誘導を如何に行うか、が本治療で重要であることを報告した。(文献6,7)
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