研究概要 |
浜松医科大学第二外科で診断、治療を行った腹部大動脈瘤(AAA)患者108例と閉塞性動脈硬化症(ASO)109例の血漿型PAF-AH遺伝子を調べ、健常者114例とのあいだで遺伝子欠損者の割合を比較検討するとともに、血漿型PAF-AHの酵素活性を測定した。(方法)患者静脈血を採取し、DNAを抽出、allele specificなPCRにてExon9のG^<994>→T point mutationを検討した。また血漿中のPAF-AH酵素活性を測定した。(結果と考察)正常な遺伝型GG、ヘテロ欠損GT、ホモ欠損TTの割合は健常群においてはGG76.3%,GT21.9%,TT1.8%であったのに対し、AAA群ではGG61.1%、GT30.3%、TT1.9%、一方ASO群ではGG67%、GT30.3%、TT2.7%でありオッズ比はAAA2.05(95%CI;1.59-2.67)、ASO1.59(95%CI;1.00-2.53)と両疾患群でPAF-AH欠損者の割合が多いことが判明した。またPAF-AH酵素活性についてはいずれの群においてもヘテロ欠損GT genotypeのグループは正常の遺伝型GG genotypeグループの約半分の酵素活性しか持たず、ホモ欠損TT genotypeでは全く酵素活性を認めなかった。またAAA、ASO群のPAF-AH酵素活性を同じgenotypeのグループ間で健常群と比較するとAAA、ASO両群とも有意に上昇していた。以上の結果から血漿型PAF-AH欠損者の割合はAAA、ASOの患者において高く、本遺伝子欠損が日本人におけるAAA、ASO発症の新たなrisk factorであることが示唆された。またこれらの疾患でPAF-AH酵素活性が上昇していることは動脈硬化症がPAF-AH活性をup regulateしている可能性がある。PAF-AH欠損は日本人に特異な動脈硬化の病理として興味深い。
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