研究概要 |
外科領域におけるカルバペネム耐性化の状況を検討し、院内感染への関与および耐性機序について分子生物学的手法を用いた検討を行った.方法としては、1)1987年から1998年までの12年間に当科で分離された緑膿菌428株についてimipnem(IPM)に対する耐性率の変化を検討し,血清型別分類を行った.IPM耐性株はNCCLSの基準に沿ってMIC≧16μg/mlとし,同一症例から複数株検出された場合は最も耐性の株を対象とした.2)′90年以降の分離株についてパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)によりゲノムパターンを解析した.3)′96年以降のIPM耐性及び中等度感受性(MIC≧8μg/ml)の22株についてPCR法を用いてメタロβラクタマーゼの構造遺伝子blaIMPの有無を検討した.またIPM耐性緑膿菌の各種抗菌薬に対する感受性を比較した.その結果以下の結果を得た.1)′90年から′94年のIPM耐性率は33-47%と高率であった.これは血清型別分類から特定の菌株群(′90,′91年のF群,′94年のB群)のoutbreakが原因と考えられ,PFGE解析にて大規模な院内感染が確認された.これに対して′95年以降はIPM耐性率は15%にとどまり,特定の血清型群の流行を認めず血清型による院内感染の推定は困難であったが,PFGEによる解析ではpatient to patientでとどまるような小規模な院内感染の証明が可能であった.2)耐性機序に関する解析では今回の検討ではblaIMP遺伝子陽性株は検出されず,他の抗菌薬との交差耐性が低率てあったことから当科におけるIPM耐性化にはIPM通過孔欠損による外膜透過性の低下が主に関与していると推察された.以上の結果から遺伝子型分類を表現型マーカーと組み合わせることにより小規模な院内感染が比較的早期に指摘され対策が可能となることが示唆された.
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