研究課題/領域番号 |
11671168
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
外科学一般
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北村 薫 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (70234276)
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研究分担者 |
石田 真弓 九州大学, 医学部・附属病院, 医員
木下 旬子 九州大学, 医学部・附属病院, 医員
池田 陽一 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (50311840)
井上 博道 九州大学, 医学部, 医員
大野 真司 九州大学, 医学部, 助手 (50203881)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2000年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1999年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 乳癌 / 治療効果 / 予知因子 / 補助療法 / 遺伝子導入 / アポトーシス / 薬剤耐性 / P glycoprotein(Pgp) |
研究概要 |
乳癌における治療の第一選択は外科的切除であるが、それゆえ、腋窩郭清を含めた至適な切除範囲を正確に予測し、これを必要最小限に止めるとともに、多岐にわたる術後補助療法の治療効果を予知して、画一的な集学的治療を回避することが肝要である。初年度においては、導入の可能な範囲やその効率予測を検討するために、臨床検体(切除標本)から得られる基礎データの集積に努めた。薬剤耐性を反映するP glycoprotein(Pgp)の発現と、新鮮切除標本を用いたin vitro感受性試験であるSDI testの相関および再発症例における補助療法の治療効果との相関を検討した。Pgpの発現と、SD活性や臨床病理学的因子との間に有意差は見られなかったが、Pgp(+)群のほうが(-)群に比して有意に再発率が高かった(22例、33.8%vs.8例、10.1%、p<0.001)。これは、Pgp(-)の症例では術後補助療法が奏効して再発を予防しえた可能性が示唆されるが、再発例30例の生存率においても、Pgp(-)群の生存率が有意に良好で、先の可能性を支持する結果であった。したがってPgp(+)症例は、そのままでは補助療法が奏効しにくい可能性が高く、遺伝子導入を利用した治療によって得られるメリットが大きなサブグループであると考えられた。 さらに次年度(最終)においては、血管新生因子Vascular Endothelial Growth Factor(VEGF)の関連遺伝子として、リンパ管内皮にreceptorをもつVEGF-Cの発現は、乳癌の予後因子となり得るか否かについて検討したところ、VEGF-C陽性例ではリンパ管浸潤がみられ、再発率が高く5年累積健存率が低いという新しい知見が得られた。対象は1994年から1997年に、教室で根治手術を施行した乳癌症例98例を対象とし、Santa Cruz社のヤギポリクローナル抗体を用いて免疫染色を行った。VEGF-Cは乳癌の細胞質にのみ顆粒状に特異的に染まり、10%以上染まるものを陽性とした。<検討1>98例における陽性率は39.8%であった(39/98)。陽性の39例をA群、陰性59例をB群として臨床病理学的因子について単変量及び多変量解析を行ったところ、98例の平均年令は55歳で、腫瘍径は3.7±2.0cm、組織型はinvasiveが94例、non-invasiveは4例であった。静脈浸潤陽性は28.6%(28/98)、n(+)43.9%(43/98)、TNMStageI・II86例III・IV12例で、これらの因子について両群間に差は見られなかった。しかし、n因子と相関すべきly因子はA群では61.4%(27/39)でly(+)であったのに対し、B群では38.6%(17/59)と前者で有意に高かった(p=0.0004)。<検討2>リンパ節転移陰性(n0)の55例に着目し、リンパ管浸潤(ly)の有無別にly(-)をa群、(+)をb群として再発との関係に絞って検証した。VEGF-Cの発現はa群ly(-)では37例中8例(21.6%)であった。このa群はn0かつly0で本来良好な予後が予想されるが、VEGF-C(+)の8例では再発率が37.5%と、VEGF-C(-)の10%に比して有意に高く5年累積健存率でも有意差がみられた(89.7%vs62.5%)(p=0.0437)。VEGF-Cの発現はlyと相関していたが、更にly(-)例においてもVEGF-Cの発現する症例は有意に再発率が高く、lyより鋭敏に再発を予知し得ると考えられた。これは、VEGF-Cがリンパ節に転移する前段階での癌細胞の悪性度を反映する傍証となり得る。 このように乳癌においてVEGF-Cの発現は、nやlyより鋭敏に再発を予知する因子として、これまでlow riskとみなされていたn0l,y0症例からhigh risk groupを選別するうえで有用である。
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