研究分担者 |
平井 一郎 山形大学, 医学部・第1外科, 助手 (00313156)
工藤 俊 山形大学, 医学部・第1外科, 助手 (60302296)
布施 明 山形大学, 医学部・第1外科, 助教授 (80199398)
大江 麻子 山形大学, 医学部, 医員
鈴木 明彦 山形大学, 医学部, 医員
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研究概要 |
【目的】診断法が進歩し、拡大手術を行っている現在でも、膵癌は予後不良である.その原因に局所再発があり,神経浸潤(PN)の関与が考えられる.PNの研究は膵癌治療成績の向上に必要である.今回,膵癌のPN様式を臨床的,組織学的に検討し報告する.【対象と方法】膵癌切除24症例でPNの程度と組織型,癌間質結合織の多寡,リンパ節転移,累積生存率の相関を検討した.興味ある6症例で5μの完全連続切片を1072枚作成しPN様式を観察した.a)膵内神経にPNを認めたもの.b)PN腺管が神経周囲腔から突出する症例.c)近接する2本の神経束にPNを認めた症例.d)膵内から膵外へPNが連続している症例.e)多数のPNがある症例.f)神経長軸方向にPNのある症例.p53,NCAM,MMP-9,FGF抗体を用い24症例で免疫組織化学染色を行った.【結果】PNは17/24例(70.8%)に見られた.内訳はne0:7,ne1:6,ne2:9,ne3:2例であった.組織型ではpapは3/5例にPNがなく,wellはne0:2/5例,ne1:1例,modは12/41例に認め,程度も高度であった.間質結合織ではmedは3例ともPNがなく,int:8/10例,sci:9/11例に認めた.PNのない7例ともリンパ節転移がなかった.3生率はne0:57.1%,ne1:16.7%,ne2以上では生存がなかった.連続切片の観察では,PNは50本の神経束に見られ,複数癌腺管で形成された.1)PN癌腺管は4/6例は連続したが,2例(4神経束)でスキップした.2)1本の神経束で複数ヶ所でPNは神経外腺管と交通した.3)神経外癌腺管は神経周囲に集塊を形成し神経周囲腔に侵入した.4)神経の分岐,融合に伴ってPNは連続性進展した.5)神経周囲腔から神経束内へ侵入した.6)1癌腺管が2本のPNを来した.7)膵小葉間PNが非連続性に小葉内神経に浸潤した.p53発現は18/24例(75%)であったが,PNと原発巣の差はなかった.NCAM,MMP-9,FGFとPNの関係は明らかでなかった.【結語】PNは膵癌の予後規定因子として重要で,低分化で間質結合織量が増すほど増加した.PNは神経外癌腺管と頻繁に交通した.PNの多くは連続性だが非連続性症例もあり,手術で膵周囲の断端が陰性でも,さらに遠隔の後腹膜,非癌膵実質進展が考えられた.膵周囲の十分な郭清,術中照射等の追加治療が必要と考えられた.
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