研究概要 |
消化器外科領域における術後敗血症ならびにエンドトキシン(Etx)血症は未だ致死率の高い重篤な合併症であり早急に解決すべき重要な課題である。一方,敗血症ならびにEtx血症にMφが重要な役割を担っていることが近年明らかにされている。申請者らは生体内でMφが圧倒的に多数肝臓に存在することに注目し,敗血症、Etx血症において肝Mφが如何にして活性化し,またその活性化が生体に如何なる影響を及ぼすのかをこれまで動物モデルで検討してきた。今回,肝Mφの選択的阻害剤である塩化ガドリニウム(GdC13)でプライミングした肝Mφの肝エネルギー産生,肝障害の程度、生存率を70%肝切除ラットにLPSを投与し検討した。GdC13で肝Mφを抑制しておくと,肝エネルギー産生の低下は認められず,肝障害も認められなかった。従って,その生存率は著しく改善された。同様の結果はsuper oxide scavenger(SOD)投与によっても得られ,この結果から,LPS投与により肝Mφ(kupffer cell)からsuper oxideが産生され,これが肝障害に作用するものと考えられた。従って,GdC13はkupffer cellからのsuper oxide産生を抑制し肝障害を抑えると考えられ術後敗血症ならびにエンドトキシン(Etx)血症の防御に有用と考えられた。さらに,この研究の過程で申請者らは肝臓のkupffer cellに形態的にheterogeneityが存在することを発見し,その細胞の大きさからlarge kupffer cellとsmall kupffer cellと命名した。そしてlarge kupffer cellが肝臓のresident Mφであり,LPS投与によりlarge kupffer cellがsuper oxideならびにTNFαを産生し,これらのサイトカインがsmallkupffer cell(全身の血中に存在すると考えられる)を刺激しIL-6を産生し,全身臓器に障害性に作用するものと考えられた。今後の研究の展開として,これらlarge kupffer cellとsmall kupffer cellの各々の機能を明らかにしてゆく予定である。
|