研究概要 |
消化器癌の化学療法において、抗癌剤の副作用を軽減させ転移リンパ節への薬剤到達性を向上させる治療法として、徐放性とリンパ指向性に優れた抗癌剤含有マイクロスフェアーを作成し、局所投与による抗腫瘍効果と転移抑制効果について検討した。 1.シスプラチン含有マイクロスフェアー(以下CDDP-MS)の作成に当たり、in vitroでの溶出速度や、Wistar系ラットを用いて縦隔内投与し、血中CDDP濃度およびリンパ節、腎臓、骨髄の組織内CDDP濃度、さらに副作用としての体重変化より、PGLA分子量13,000のCDDP-MSが最も徐放性とリンパ指向性が良好であり、体重減少が軽度であり、以下の実験にしようした。 2.CDDP-MSのリンパ系への移行について、蛍光剤含有マイクロスフェアーをWistar系ラットの縦隔内に投与し、リンパ節への移行の程度を形態的に蛍光顕微鏡で確認した。 3.CDDP-MSの抗腫瘍効果と副作用の関係について、DAラットの腹壁の皮下腫瘍モデルを用いて検討した。CDDP-MS局所投与群ではCDDP力価5,10,15,20mgと投与量に比例して、腫瘍増殖は抑制され、体重変化では20mg投与においてもコントロール群と同様に体重が増加し、副作用の影響はみられなかった。一方、CDDP水溶液腹腔内投与群はCDDP力価5mg/kgで増殖を抑制したが、10mg/kg投与で7日以内に全匹死亡した。 4.転移抑制効果を消化器癌モデルとして家兎VX2胃癌を作成して検討した。CDDP-MS局注群では肝臓およびリンパ節転移はみられず、胃腫瘍の増殖も抑制されていた。 5.食道癌症例に術前に内視鏡を用いて局所投与し、手術時に摘出した原発病変とリンパ節のCDDP濃度より、リンパ節への良好な移行が認められた。 CDDP-MS局所投与では直接の抗腫瘍効果と転移の抑制効果も認められ、投与方法が非常に簡便であることより臨床応用の有効性が期待される。
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