研究概要 |
本研究は,原発性および転移性肝癌に対するマイクロ波凝固療法(MCT)における作用機序に関する基礎的検討をおこなうことを目的とする. MCTは現在臨床において,原発性肝細胞癌の原発巣や肝内転移巣あるいは転移性肝癌に対する治療の目的で施行されているが,その効果発現機構に関しては未だ不明な点も多く,本研究ではその機序として,アポトーシスの関与に着目し動物実験による研究を行った. 初年度の平成11年度は,内視鏡用モノポーラ型針状電極を使用してラット正常肝に対してマイクロ波凝固を施行し,MCT実験モデルを完成させることができた. 2年目の平成12年度は、この動物モデルを使用して実験を行い,MCT直後から12時間後まで,経時的に組織障害領域が拡大することが確認された.またこの機序として,肝腫瘍組織内のTUNEL,陽性細胞の増加,電気泳動におけるラダー形成,およびアポトーシス反応の主要な酵素であるカスパーゼ3酵素活性の上昇が認められたことから,この組織障害領域の拡大に,マイクロ波凝固に伴う熱刺激により誘導されたアポトーシスの機序が関与することが示唆された,さらに,アポトーシスに対する生体の防御機構として,熱ショック蛋白(HSP)が産生され,本蛋白が組織障害領域の拡大を抑制することを確認した. 最終年度の平成13年度は,これらの研究結果について学会および論文発表を行った.また,最終年度の研究において,腫瘍に対するマイクロ波凝固療法の直接の効果に加えて,本治療が肝内遺残腫瘍の増殖を促進し,その機序として肝組織内サイトカインが関与している可能性が高いという臨床的にも極めて重要な知見を得た.この結果についても,論文としてまとめ投稿・受理され,現在印刷中である.
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