研究概要 |
研究1:新鮮ヒト臍帯動脈切片を培養した実験系を用いて,RNase-FGF fused proteinが臍帯動脈由来の増殖因子により導かれた血管新生を阻害するかを検討した。in vitro血管新生評価法として新鮮ヒト臍帯動脈切片培養法を用いた。新生血管の評価は位相差顕微鏡下に撮影した臍帯動脈断端を含む画像をNIH Imageを用いて解析し,新生血管指数を算出して行った。RNase-FGF fused protein無添加wellにおいて新生血管は臍帯動脈断端から成長した。これは臍帯動脈由来(内因性)の増殖因子または外因性ヘパリン結合性増殖因子以外の増殖因子に依存していると推測された。RNase-FGF fused proteinを0〜300μg/0.5ml/well添加の条件で臍帯動脈を培養すると新生血管指数はそれぞれ3.20〜0.31となり,濃度依存的に血管新生抑制効果が認められた。一方,同濃度のRNase単独添加群では抑制効果は認められなかった。以上よりこの抑制結果は血管内皮上のFGF受容体を介する効果であると考えられた。また臍帯動脈は培養期間中に形態学的な変化を示さず,この濃度範囲での毒性は認められなかった。 研究2:ウサギ角膜法を用いて,FGF(外因性)により誘導された血管新生をRNase-FGF fused proteinが阻害するかを検討した。ウサギ角膜法ではFGF2μgにより安定した新生血管を誘導することが可能となった。RNase-FGF fused protein32.3μg含有メチルセルロースディスク移植角膜において,完全な血管新生抑制効果をみた。しかし角膜炎の併発や,移植検体濃度の不安定などより濃度依存性血管新生抑制効果を認めるには至っていない。 研究3:ヒトEGF-RNase fused proteinを用いてラットおよびヒトの血管平滑筋細胞の増殖抑制を試みた。ラットの胸部大動脈、CABG時に採取したヒトの大伏在静脈および内胸動脈由来の血管平滑筋細胞をout growth法により培養し、得られたサンプルを投与して増殖抑制効果を評価した。評価の方法としては、96穴プレートに各穴5000の平滑筋細胞をプレーティングし、24時間後にサンプルを加え72時間培養後標識サイミジンの取り込みを指標とした。ヒトRNase・EGFは対照として用いたEGFレセブター非発現細胞の標識サイミジン取り込みを抑制しなかったが、EGF過剰発現細胞の標識サイミジン取り込みを抑制した。また、ラットの胸部大動脈平滑筋細胞およびヒトの大伏在静脈および内胸動脈由来培養平滑筋細胞の標識サイミジン取り込みを濃度依存性に抑制した。EGFレセブターを分子標的としたヒトRNase・EGFによる新しい抗血管新生治療の可能性が示唆された。
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