研究概要 |
【目的】Probioticsの一種であるLactobacillus casei(LC)には抗感染効果があるが腹膜炎モデルに関する知見はない。 今回マウス糞便性腹膜炎モデルを作成し、LCの効果と至適投与量、作用機序について研究した。 【方法】LC製剤としてLC-9018株の加熱死菌製剤(ヤクルト本社より提供)を用い、生食水で浮遊液にに調製後、6週齢のICR雄性マウスに腹腔内投与(ip)を行った。LCの投与量(μg)は100.200.500で各々のマウスをB,C,D群とした。対照(A群)には生食水を0.1mlをipした。 実験1:24hr後エーテル麻酔下で開腹手術を行った。即ち、盲腸の盲端から5〜6mmの部位で絹糸で結紮した後、結紮糸より盲瑞側へ4mmの部位で盲腸を切離し、長さ4mmの腸内容を含めて盲腸を腹腔内に還納し閉腹した。各群の術後生存率を観察した。 実験2:A.B.D群5匹を用い、実験1と同様の手術後6hrで犠死させ、生食水5mlをip後に洗浄液を採取し、検体希釈液をBHL寒天培地に塗布後37℃で24hr培養して発生したコロニー数から腹腔内菌数を算出した。 実験3:各群10匹を用い、LC投与後24hrに犠死させ、10%FCS加RPMI1640液5ml ip後に洗浄液を採取し、腹腔内浸出細胞数(PEC)を算出した。 実験4:各群10匹を用い、LC投与後24hr後に犠死させ、PBS5ml ip後に洗浄液を採取し、比色法にてMyeloperoxydase活性(MPO)を定量した。 【結果】実験1:生存率はA群13%(2/16).B群19%(3/16).C群38%(6/16).D群63%(10/16)であり、D群はA群より有意に生存率が良好であった(p<0.01)。 実験2:A B.D群における腹腔内菌数(×10^4cfu/ml)は各々141、51、23でB.D群はA群より有意に低値であった。 実験3:A〜D群におけるPEC数(m±SD×10^7/ml)は各々0.3±0.2,1.4±0.4.1.4±0.6,1.0±0.4でありB〜D群はA群より有意に高値で、B.C群は各々D群より有意に高値であった。 実験4:A〜D群におけるMPO値(m±SD.U/ml)は各々0.03±0.02,1.24±0.35,1.69±0.73,1.82±0.92であり、B〜D群はA群より有意に高値で、D群はB群より有意に高値であった。 【総括】マウス糞便性腹膜炎モデルにおけるLC前投与で生存率は著しく向上した。腹腔内菌数は対照より低値でPECとMPOは対照より高値になった。至適投与量は500μgと考えられるが、生存率の向上に及ぼす背景として、LC投与後24hrのMPOが高活性であり、術後の腹腔内菌数の減少が考えられた。
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