研究概要 |
膵癌の悪性増殖能の高さの要因として間質分解酵素matrix metalloproteinase(MMP)群に着目し,in vivoモデルを用いて,癌組織内のMMPが膵癌の発生進展に果たす役割,MMPによる膵癌の血清診断の可能性,及びMMP阻害剤による発癌抑制効果を解明する事を目的とした。 ノザンブロッティング,免疫組織化学的染色,ゼラチンザイモグラフィー等の手法を用い,ハムスター膵発癌モデルによって作成された膵癌組織を検討した結果,MMP酵素群のうちMMP-2,MMP-9が,膵癌の発生進展に深く関与していることが明らかになった。特にMMP-2は膵癌の発癌初期から発現がみられており,膵癌の多段階発癌過程におけるひとつの重要なポイントとなっている事が示唆された。加えて,血清中のMMP発現量と背部皮下に移植した可移植性膵癌株(transplantable hamster pancreatic duct carcinoma,HPDt)との腫瘍重量の相関性が明らかになり,膵癌の血清診断への応用が示唆された。 化学合成されたMMP酵素群の阻害剤であるOPB-3206と膵癌の修飾作用を検討した結果,OPB-3206はMMPの活性化を阻害することで,発癌モデルにおける膵癌の発生抑制効果を示している事が確認された。 以上より,MMPが膵癌発生進展に重要な役割を果たしていること,MMPを用いた膵癌の血清診断の可能性,MMP阻害剤によるchemopreventionの有用性が本実験により明らかにされた。
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