研究概要 |
1.進行食道癌97例のneoadjuvant therapyの治療効果を切除標本の病理組織学的治療効果から判定すると,組織学的奏効率は化学療法;10.0%,化学放射線療法;86.4%,放射線療法;40.0%であり化学放射線療法の治療効果が格段にすぐれていた. 2.治療効果の全く認められなかったgrade0症例は化学放射線療法群,放射線療法群では皆無であったが,化学療法群では14例(23.3%)にも認められた. 3.治療効果によって癌が完全に死滅したgrade3症例は化学放射線療法群では18.2%,放射線療法群では13.3%に認められたが,化学療法群では1.7%に過ぎなかった. 4.neoadjuvant therapy前の内視鏡生検検体のp53蛋白の免疫組織染色の結果によって組織学的治療効果をクロス集計すると,化学療法単独群でのみ異常p53蛋白発現例で治療効果の減弱が認められたが,化学放射線療法群,放射線療法群ではp53蛋白の状態と組織学的治療効果は全く無関係であった. 5.化学療法群でgrade2以上の奏効を示した6例のダイレクトシークエンスによるgenomic DNA解析の結果から,6例中2例で塩基レベルの変異が認められた.1例はexon7のGAC→GTC(Asp→Val),exon8のAGC→AGT(Ser→Ser)でexon7の変異のみアミノ酸置換を生じた.もう1例の変異はIvs4(-2)ag→tgの変異でありsplicing mutationであった.しかしこれら2例の免疫組織染色の結果はいずれも陰性であり,必ずしも塩基レベルでのp53癌抑制遺伝子変異と蛋白レベルでのp53癌抑制遺伝子変異が一致しないことを示しており,どちらの遺伝子情報が臨床的に有用であるか今後検討が必要であると考えられた.
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