研究概要 |
本研究では悪性腫瘍細胞の野生株および抗腫瘍薬耐性株における^<99m>Tc-MIBIの集積とMDR1mRNAの発現との関連を検討した.さらに抗腫瘍薬耐性株において^<99m>Tc-MIBIを用いて耐性克服薬による獲得耐性の変化を評価し,耐性克服薬による抗腫瘍薬の治療効果増強を判定し,^<99m>Tc-MIBIの獲得耐性モニタリングにおける妥当性について検討した. ラットグリオーマ細胞株;C6,RG2および癌細胞株;Walker256(W256)におけるビンクリスチン(VCR)耐性腫瘍細胞株は1ng/mlのVCR添加MEMで継代培養することにより樹立され,各細胞株における耐性獲得はMTT assayで評価した.MTT assayは,VCR無添加のwellの吸光度を基準値(100)としてVCRを1μg/ml添加したwellの吸光度を相対値で表し,surviving fraction(%)として検討した.各腫瘍細胞におけるVCR耐性株のsurviving fractionは各野生株と比較して有意に増加し,各耐性株における^<99m>Tc-MIBI集積量(Vd)は野生株の6〜45%まで有意に低下した(p<0.01).各耐性株ではRT-PCR法で野生株と比較してMDR1mRNA発現の増加が確認された.MDR1 mRNAの高発現細胞株ほど^<99m>Tc-MIBIの集積が有意に低下し(p<0.01),^<99m>Tc-MIBIの集積はMDR1mRNAの発現と負の相関がみられ(r=0.98,p<0.01),P糖蛋白質を介した細胞外輸送による^<99m>Tc-MIBIの細胞内集積の低下が示唆された. 各耐性株において耐性克服薬(ベラパミル,シクロスポリン,FK506)を5μMの最終濃度で3日間作用させた後のMTT assayではsurviving fractionはいずれも有意に低下した.各耐性克服薬を5μMの最終濃度で1時間作用させた後の^<99m>Tc-MIBIの集積量は耐性克服薬投与前と比較して増加し(p<0.01),耐性克服薬による^<99m>Tc-MIBIの細胞外輸送の抑制が明かとなり,抗腫瘍薬の細胞外輸送阻害に基づく耐性克服効果が示唆された.^<99m>Tc-MIBIは悪性脳腫瘍の化学療法における多剤耐性モニタリングに有用なトレーサとして期待される.
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