研究概要 |
最近、虚血後にAMPA型受容体のサブユニット構成が変化することによりAMPA型受容体がカルシウム透過性を持つようになり,遅発性神経細胞死を引き起こす可能性が示唆されたが(GluR2仮説),in vivoでの直接的証拠はいまだ無い.本研究は,GluR2仮説をin vivoで直接的に検証することを目的とする. すなわち,カルシウム非透過性を決定するサブユニットGluR2を持たないAMPA型受容体を選択的に阻害する薬剤を脳虚血動物モデルに投与することにより,海馬CA1細胞の虚血性神経細胞死を抑制することが可能かどうかを検討した.虚血モデルには砂ネズミの両側総頚動脈5分間閉塞モデルを用い,カルシウム透過型AMPA型グルタミン酸受容体の選択的阻害薬である1-naphythyl-acetyl spermin(Nasp)を人工髄液に溶解し様々な濃度および時間で左側脳室内投与した.動物は虚血後7日で潅流固定しCA1の残存細胞数を計測した.mini-osmotic pumpを用い,8ul/hで虚血後2〜7時間から24時間連続投与した場合,わずかな保護効果が認められたが,その効果は僅少であった。lul/hで虚血前日から7日間連続投与した場合(1,5,10,50mM),25mMを2.5ul/10minで1回投与した場合(虚血後1時間,24時間)には有意の保護効果は認められなかった. 砂ネズミ一過性前脳虚血による海馬CA1遅発性神経細胞死ではGluR2仮説で提唱された虚血後のAMPA型受容体を介したカルシウム流入は,その細胞死進行の機構において大きな役割を担っているとは考えにくいことが示唆された. 平成12年度には,視床網様核ニューロンなど海馬CA1ニューロン以外の神経細胞における虚血性神経細胞死でのGluR2仮説の検証を行う予定である.
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