研究概要 |
グリオーマの悪性化には、G1期チェックポイントにおける細胞周期制御機構の障害が関与しているが、同時に、細胞を不死化するメカニズムとして、テロメレースの活性化が認められる。このふたつの機構が密接に相関しているとの仮定のもとで、株化グリオーマ細胞に対してp16INK4を強制発現させることによるテロメレースの活性の変化を見るとともに、様々なグレードのグリオーマにおいて、13qLOH(RB),CDKN2A欠失(p16),CDK4遺伝子増幅(Cdk4)という3つの遺伝子異常の出現と、テロメレース発現状態について検討した。 T98G,U251というふたつの細胞株において、アデノウイルスベクターに組み込んだp16/CDKN2A遺伝子を強制発現させたところ、細胞増殖が抑制され、細胞は平坦化して分裂増殖が停止した。この状態におけるテロメレース活性を測定したところ、T98Gにおいてはほぼ完全に、またU251においては著明にテロメレース活性が抑制されることを見いだした。 グリオーマ検体における13qLOH、CDKN2A欠失、CDK4増幅は、予想された様に、悪性度の高いものほど高率に認められた(grade4;80%,grade3;20%,grad2;5%)。しかし、我々の検討ではテロメレースの活性は 報告されているよりも頻度が低く、グリオブラストーマの約半数においてしか検出されなかった。また、テロメレース活性と細胞周期制御機構の異常との相関も見いだせなかった。 従って、培養細胞における知見と、実際の腫瘍における知見とは現時点では整合していない。ただし、腫瘍の採取条件などにややばらつきが見られるなどの因子が存在し、確定的な結論とはいいきれない。今後の検討を続けたい。
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