研究概要 |
神経損傷後の異常感覚の発生には,損傷神経自体の過敏性獲得や上位ニューロンの自発的な高頻度の興奮による求心路遮断痛に加えて,脊髄の可塑性の関与が示唆される.脊髄後角の軸索終末には多数の神経伝達物質・関連物質が存在し、末梢側軸索の刺激・損傷により多様に変化することに着目し、以下のモデルを作成検討した。 I.坐骨神経圧挫損傷モデル:坐骨神経に圧挫による軸索断裂損傷を加えた。病変側の脊髄後角表層のE-cadherin,substance-Pの発現が低下した。圧挫部位へのNGF持続注入はsubstance-Pの変化を制御し得るが,cateninを介して細胞骨格蛋白と結合するE-cadherinはregulateしないことを確認した。 II-1.凍結自己神経frozen autograft移植モデル:切断した坐骨神経に、その末梢部位の坐骨神経を凍結・融解を繰り返し、細胞成分を除去した組織としこれを接合した。 II-2 無細胞.acellular allograft移植モデル:化学処理を施すことにより、細胞成分を完全除去した神経組織を切断した坐骨神経中枢端に接合した。 II-3.外因性成長因子持続投与再生促進モデル(切断+galectin-1(GAL-1)持続投与):最近神経再生促進作用が明らかとなったGAL-1を移植組織断端に浸透圧ポンプで持続投与した。 II-4.抑制モデル:同様操作にて抗galectin-1中和抗体を持続投与することで内因性のGAL-1の作用を抑制した。 末梢神経の再生能は、frozen autograftモデル、acellular allograftモデルの両者ともに、GAL-1投与により促進され、抗galectin-1中和抗体により抑制されることがわかった。また、acellular allograftモデルにおいて再生軸索の伸長に先んじて、シュワン細胞の遊走が促進されることが明らかとなった。 今後これらの再生モデルにおける脊髄後角における軸索終末の変化の差異を検討する。
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