研究概要 |
1.p53(+/-)の雌雄の交配を延べ164回行い,推定妊娠14±2日目にENU25または75mg/kgを腹腔内投与した.78匹が出産した.経過を観察することの出来た仔のp53 genotypeは(+/+)73匹,(+/-)80匹,(-/-)10匹で,p53(+/-)の3匹(3%),p53(-/-)の1匹(10%)に脳腫瘍の発生を認める事が出来た. 2.それぞれのgenotypeのマウスの脳について免疫組織化学を行い以下のような結果を得た. (1)いずれの腫瘍もPCNA標識率が高くGFAP陽性で,悪性神経膠腫と考えられた.腫瘍発生確認が生後約10週の二つの腫瘍(#370,p53[+/-]と#537,p53[-/-])は,生後約30週で発生した腫瘍(#400,p53[+/-]と#505,p53[+/-])と比べ,より低分化な神経膠腫の像であった.(2)#537の腫瘍部においてのみ,僅かにではあるがNestinの発現を認めた.また,神経細胞マーカーNeuNは腫瘍#400と#505には発現を認めなかったが,#370と#537にはまばらに発現を認めた.OligodendrocyteのマーカーCNPaseはいずれの腫瘍においても発現が見られなかった.(3)ApopTagによるapoptosis細胞は腫瘍においても非腫瘍部においても検出されなかった.BAX, Bcl-2,Fas陽性の細胞も検出されなかった.CyclinA陽性細胞も検出されなかった.Tsp-1は非腫瘍部の血管に発現が認められたが,その局在は内皮細胞あるいは血管内腔と考えられた.腫瘍内の血管には発現が認められず,発現はp53のgenotypeに依らなかった. p53(-/-)の個体に発生した腫瘍においてstem cellの形質が残っていたこと,発生時期の早い腫瘍において神経細胞マーカーの発現を認めたことは,p53ノックアウトマウスにおける神経膠腫発生の機序を考察するうえで興味深い所見と考えられるた.
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