研究概要 |
IL-1βは炎症性サイトカインの一つであり神経細胞死誘導作用を持つと考えられている。一方、インドメタシンは抗炎症薬でありIL-1β、free radical合成制御効果を持つ。我々は脳損傷時におけるIL-1βの働きとインドメタシンの効果、特にIL-1β合成抑制効果と発熱抑制、及び脳圧降下作用に注目し臨床応用へ向けた研究を行った。 (方法)まず、海馬の遅発性神経細胞死モデルとしてラット心停止モデル(5分間)を作製し、海馬におけるIL-1βの発現を免疫組織学的手法を用いて経時的(0,3,6,12,24th,1,2,4,7days)に測定する。次にIL-1βの遺伝子欠損マウスを用いた心停止モデルを作成しIL-1βと遅発性神経細胞死誘導との関係を経時的に(0,12,24h,2,4,7days)in vivoにおいて証明する。 クモ膜下出血患者、重症頭部外傷患者に対してインドメタシンを投与し持続的脳温・脳圧測定を行い(持続的脳温脳圧モニター:CAMINO社)、髄液内IL-1β濃度を測定する(ELISA法)。 (結果)IL-1βは虚血後に海馬CA1領域の反応性マイクログリアに送気より発現していた。IL-1KOマウスではwild typeと比較し海馬CA1領域の遅発性神経細胞死が抑制されていた。インドメタシン投与を行った症例においては脳温下降が見られ脳圧低下が認められた。また、髄液中のIL-1βは脳損傷の重症度に比例して上昇していた。 (考案)IL-1βは虚血後早期より発現し神経細胞死誘導作用を持つことが推察された。インドメタシンの神経細胞死制御効果として脳温上昇の抑制効果、脳圧下降効果が考えられた。今後はこの作用機序について次年度の研究を進めていく予定である。
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