研究概要 |
慢性持続圧迫による脊髄障害の病態を検討するため,緩徐に膨張する子宮頚管拡張剤Dilapan(Gynotech INC.)を圧迫材に用いた脊髄持続圧迫モデルを作成し,主として脊髄白質の病変を組織学的に検討した. 1.圧迫後7日までの急性期では,後索と隣接する灰自質に限局した軽度の壊死を認めた以外には組織破壊は明らかではなかった.前角や側索・前索の壊死はなかった. 2.自質では,海綿状変化が2日目から出現し,特に圧迫部位とは関係なく脊髄白質全体に観察され,以後3ヶ月までみられた. 3.電顕所見(1)側索では,2日目以降,軸索は浮腫性膨化し,ミエリン解離も伴っていた.軸索が脱落しアクソンボールも多数観察された.この軸索変性の所見は,程度は軽減するが圧迫後90日目まで継続して観察された.(2)側索及び前索には,軸索変性の他に,髄鞘の菲薄化ないし脱落した軸索が多数観察された. 4.稀突起膠細胞に対する免疫組織化学所見で,白質における細胞数の減少が1週以降で明らかであった.この変化は,2週〜1ヶ月で最も著しかった.また,TUNEL法による観察では,白質に陽性細胞が圧迫後24〜48時間で認められ,72時間で最も多く観察された. 以上の結果から,脊髄持続圧迫による白質病変の主体は,圧迫期間中持続する軸索変性と残存軸索に生ずる脱髄と考えられた.また,脱髄の機序として稀突起膠細胞のapoptosisが示唆された.
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