研究概要 |
<はじめに>抗癌剤の抗腫瘍効果がvitroと生体では差がみられることはしばしば経験されることである。種々の原因が想定されるが、その1つの要因としてvitroの薬剤濃度と生体において腫瘍細胞が暴露されている薬剤濃度の差異が考えられる。研究者らは、生体において脳腫瘍細胞が直接面していると考えられる細胞外液中における抗癌剤の濃度を、マイクロダイアリシスを用いて初めて測定し得たので、以下に報告する。 <方法>脳腫瘍実験モデルとして9Lグリオーマ、ACL15(大腸癌株)を用い、ラット移植脳腫瘍を作成した。種々の濃度の2種類の抗癌剤(ACNU,シスプラチン)を静脈内投与し、マイクロダイアリシスにより経時的に組織よりサンプリングを行った。実際の細胞外液中の薬剤濃度(y)は予備実験により作成した次式により算定した。ACNU:y=8.36x-0.065(x:サンプル中のACNU濃度,相関係数0.999)シスプラチン:y=8.43x+0.086(x:サンプル中のシスプラチン濃度,相関係数0.999) <結果>9Lグリオーマモデルにおいては、ACNU10mg投与群で最高値5.41μg/ml(20分値)、シスプラチン2mg投与群で最高値12.3μg/ml(10分値)であった。ACL15脳腫瘍モデルにおいては、ACNU10mg投与群で最高値2.77μg/ml(20分値)、シスプラチン2mg投与群で最高値13.3μg/ml(10分値)であった。ACNU1mg、シスプラチン0.2mg投与した群では、いずれの脳腫瘍においても薬剤濃度は測定限界以下であった。また、ACNUがシスプラチンに比べ、腫瘍細胞外液中からの減衰は緩やかであった。 <結論>本研究において、検討した2種の代表的抗癌剤の血中から脳腫瘍細胞外液への移行は、中毒量(ACNU10mb,シスプラチン2mg)を投与した時のみ確認された。また腫瘍細胞外液中における薬物動態は薬物の種類によって異なることが示唆され、薬物別の検討が必要と考えられた。
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