研究概要 |
【目的】自己の神経を機械的に伸長し,神経欠損間隙を埋めて神経縫合を行うことは,神経損傷治療の新たな分野であると考える.神経の伸長速度が神経再生におよぼす影響を解明することを目的とし,組織形態学的に検討した。 【方法】13週の雄Wister系ラットを使用した.右大腿骨のみを展開し,大腿骨を中央部で切断した後,ラット用骨延長器を装着した.坐骨神経の伸長はラットの大腿骨延長により行い,伸長速度を1日0mm(コントロール群),3mm(3mm群),5mm(5mm群)の3群とし,術翌日から伸長を開始し,15mmまで伸張した.伸張開始後7日目に大腿骨を元の長さに戻し,1.2mmのキュルシュナー鋼線を髄内に挿入して固定した.次に坐骨神経を展開し,大腿中央部で切断後縫合した.縫合後2,4,6,8週目にフットをグルタールアルデヒドで潅流し,縫合部より遠位である膝部の坐骨神経を採取した.各群各週とも3匹ずつとした.採取神経のトルイジンブルー染色標本を作成し,組織学的観察を行った.また,組織定量的に検索した. 【結果】組織所見では,コントロール群と3mm群は軸索の再生を2週で認めたが,5mm群では4週目で認めた.ミエリンデブリスは,各週ともコントロール群と3mm群に比し5mm群で多くみられたが,経過とともに減少した.5mm群では3mm群より神経管内に線維組織を多く認めた.再生軸索直径のヒストグラムでは,6週目ではコントロール群と3mm群が4μmにピークがあったのに対し,5mm群では2μmにピークがあった.再生軸索の神経幹内面積比では,3mm群が5mm群より各週で大きな値を呈した. 【結論】1日3mm伸長群は5mm伸長群に比し,切断縫合後の神経再生速度と再生量が良好であり,コントロール群と差がなかった.低速度伸長神経であれば,神経伸長を神経修復に応用することは可能であることがわかった.
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