研究概要 |
1)高転移系可移植性ラット骨肉腫の肺転移巣より樹立した細胞株を用いて野生型p53のlipofection法による導入実験を施行し、細胞増殖、アポトーシス関連遺伝子の発現等を検討した結果、細胞増殖はcontrolに比べ約70%に抑制され、遺伝子発現についてはBcl-2の発現量の減少とDNA断片化が観察された。これらの結果より野生型p53による骨肉腫細胞増殖抑制効果の一端は、Bcl-2発現量の抑制に伴うアポトーシスが関与していることが示唆された。 2)p16およびp19遺伝子の発現について、ラット骨肉腫細胞株COS1NR,COS2NR,COS4NRおよび高転移系ラット骨肉腫継代株の皮下腫瘍、肺転移巣ならびにラット悪性線維性組織球腫細胞株MFH1NR,MFH2NRおよびそれらのラット背部皮下への戻し移植による皮下腫瘍に関してRT-PCR法にて検索した結果、いずれの細胞株においても、p16およびp19遺伝子の発現は同等に見られ、また骨肉腫の背部皮下腫瘍とその肺転移巣における発現、悪性線維性組織球腫の皮下腫瘍における発現も同等に観察された。従って、これら遺伝子の発現量と転移能の相関は考えにくく、これら遺伝子のgenomeレベルでの変異をPCR-SSCP法に検索したが、point mutationやdeletionは検出されなかった。 3)Multi-probe RNA protection assay法にて、COS1NR,COS2NR,COS4NRおよびMFH1NR,MFH2NRにおけるTGF-β isoform発現について検索した結果、骨肉腫細胞においてはTGF-β1および2の発現が中等度に見られ、TGF-β3も弱い発現がみられたが、MFH細胞株においては、TGF-β1の強発現がみられ、TGF-β2および3の発現は認めなかった。 4)RT-PCR法にてCOS1NR,COS2NR,COS4NRおよびMFH1NR,MFH2NRにおけるTGF-β receptor IIの発現を検索したが、control fibroblastとの比較で発現の増減は認めず、RT-PCR- restriction SSCP法によるTGF-β receptor II、Smad2および4遺伝子変異の検索においても、いずれの遺伝子にもpoint mutationやdeletionは検出されなかった。
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