研究概要 |
従来の研究では正常時における脳血管作動薬や麻酔薬の脳循環に与える影響は,詳細に検討されているが,低体温時の脳血管の反応性は充分には検討されていない.そこで,下記の研究を試みた. (1)α2アゴニストの直接の脳血管に対する反応性の検討-通常体温と低体温の比較 雑種成犬をを対象として,静脈路を確保の後、ペントバルビタールで麻酔を維持し,頭窓(closed cranial window)を作製することによって脳軟膜血管を直接観察した.通常体温においてはクロニジン,デキサメデトミジンともに脳軟膜血管を収縮させるが、高濃度においては収縮の程度が減弱し,他の拮抗的な作用機序が発現することがわかった。この後、低体温での反応性を観察する予定であったが,低体温によって出血傾向が出現し,頭窓の維持が困難となったため,実験動物の変更を行った. (2)日本白色兎を対象として,静脈路を確保後,ペントバルビタールの静脈内投与で麻酔を維持し,頭窓を作製することによって脳軟膜血管を直接観察した.14羽を通常体温群(39.0〜40.0度)および低体温群(33.0度〜34.4度)の2群に分けて実験を行った.両群ともデキサメデトミジンを3濃度(10^<-7>M,10^<-5>M,10^<-3>M)を人工髄液に溶解してwindow内に局所投与した.10^<-7>M,10^<-5>M濃度のデキサメデトミジンは通常体温群では脳軟膜血管を拡張させ,低体温群では収縮させた.高濃度(10^<-3>M)のデキサメデトミジンは両群において脳軟膜血管を拡張させた.従って,低体温ではデキサメデトミジンの脳微小循環に与える影響が修飾されることがわかった.また,通常の体温においてもデキサメデトミジンの脳微小循環に与える影響は種差があることがわかった.
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