研究概要 |
雑種成犬25頭を対象としフェンタニル群(FEN群,n=8),セボフルラン群(SEV群,n=9),セボフルラン先行虚血群(SEV-IP群,n=8)に分類した。気管内挿管後,FEN群はフェンタニル0.3μg/kg/min静脈内持続投与で,SEV群およびSEV-IP群はセボフルラン1MAC(呼気終末濃度)で麻酔維持した。心尖部よりカテ先型圧トランスデューサとコンダクタンスカテーテルを挿入し,左冠動脈前下行枝(LAD)に冠動脈閉塞用のターニケットを装着した。心表面より12MHzの超音波トランスデューサで乳頭筋レベルの左室短軸像を描出,後方散乱エコーを記録した。FEN群およびSEV群はLADを20分間閉塞後,120分間再灌流を行い,SEV-IP群はLAD閉塞前に"5分間閉塞・15分間再灌流"を2サイクル行った。LAD閉塞前,閉塞20分後,再灌流20分,60分,120分後に各測定を行った。心室中隔(虚血領域)と左室下壁(正常領域)に関心領域を設定し,後方散乱エコーの心周期変動を解析,同時に収縮期壁厚増加率を測定した。また左室圧容量曲線から左室収縮終期エラスタンスなどの各指標を測定した。 3群ともにLAD閉塞後,虚血領域の収縮期壁厚増加率は有意に低下したが,閉塞20分後においてFEN,SEV群と比較してSEV-IP群で有意に高かった(FEN群:-2±13,SEV群:-7±13,SEV-IP群:13±8%)。虚血領域の後方散乱エコーの周期性変動も3群ともにLAD閉塞後低下したが,SEV-IP群においては有意な変化ではなかった(閉塞20分後;FEN群:4.5±1.3,SEV群:4.8±2.6,SEV-IP群:5.2±1.7dB)。心室・動脈カップリングの指標である機械的仕事と総機械的エネルギーの比はFEN群,SEV群ではLAD閉塞後有意に悪化したがSEV-IP群では保たれた。セボフルラン麻酔下で先行虚血により心機能および心筋組織性状の保護効果を示したが,セボフルラン麻酔単独では心保護作用は認められなかった。
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