研究概要 |
背景:プロテインカイネースC(PKC)は細胞内シグナル伝達機構における重要なリン酸化酵素でありPKCは虚血により活性化され、グルタメイトやアスパルテイトの遊離及び虚血性神経細胞障害に関与している可能性が大きい。虚血障害におけるPKCアイソザイムの発現が各臓器によって異なることが示されている。 目的:虚血による細胞障害性と、PKC活性およびPKCアイソザイムの細胞内分布変化との関連を明らかにするために、ラット副腎髄質由来PC12細胞を用いて検討した。 方法:PC12細胞に存在しているPKCアイソザイム(α,γ,δ,ε,ζ,λ)で、虚血が各アイソザイムの細胞内動態に及ぼす時間的・空間的影響を調べた。 1.PC12細胞を10%馬血清と5%牛胎児血清を含むRPMI1640で培養し、シアン化カリウム(KCN)による細胞障害性につき検討した。細胞障害性は、培養液中の乳酸脱水素酵素(LDH)を測定した。 2.細胞を核(F1)、ミトコンドリア(F2)、細胞膜(F3)、細胞質(F4)の各分画に分けPKCアイソザイムを測定した。細胞分画法を用いてF1からF4までの細胞を分離し、それぞれの分画におけるPKCアイソザイムの蛋白発現をイムノプロツト法にて測定した。 結果:KCN濃度の0.1mM,0.5mM,1mMで濃度、時間依存性に細胞は障害された。さらに培養液からブドウ糖を除くことにより、障害度は増した。 低酸素刺激(KCN)に対し、F1からF4の各分画でのPKCアイソザイムの蛋白量の変化は、PKCγがF2とF3で60分から120分まで上昇していた。 結論:低酸素障害(KCN)に対して、PC12細胞においてカルシウム依存性のアイソザイムであるPKCγが重要な役割を持つことが示唆された。
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