研究概要 |
表在性膀胱癌の特徴は多発性再発性であり、腔内播種がその主たる原因と考えられている。腔内播種には、癌細胞の細胞外基質への接着と運動が必須であり、細胞膜タンパク、細胞内シグナル伝達がそれを調節しているものと考えられる。1)ヒト膀胱癌細胞株を効率的にマウス膀胱に移植する正所性移植モデルの作成に取りかかった。EDTAによる膀胱粘膜処理後、腫瘍細胞懸濁液を注入し、マウスの尿道を結紮し排尿を抑えて腫瘍細胞が十分膀胱に接触させて生着させる方法を開発した。ヒト膀胱癌細胞株6株(DAB-1, EJ, UMUC-2, UMUC-6-dox, KU-1, KU-7)の移植実験を行ったところ、高頻度生着株(UMUC-2 : 100%, KU-7 : 100%, UMUC-6-dox : 100%)、低頻度生着株(EJ : 18%)、非生着株(KU-1 : 0%, DAB-1 : 0%)、が観察された。2)膀胱癌細胞の接着関連タンパクであるインテグリン、接着班局在タンパク、カドヘリンおよび細胞内結合タンパクの発現をWestern blot法で検討すると、生着株では共通して、integrin beta4の発現低下、cadeherinの発現低下、beta-cateninの発現低下が観察された。FAK、paxillin、alpha-catenin、Csk、Crkなどの発現には一定の傾向を認めなかったことから、播種には主にインテグリン_4の発現、カドヘリンの発現が関与していると考えられた。3)インテグリン_eta4の発現を臨床検体で検討すると、正常の上皮細胞では基底膜側の細胞膜に濃縮する_eta4が、びまん性パターンを示す腫瘍は、T病期の進行、転位の有無と強く相関していた。以上より、膀胱癌の接着分子の機能の制御により、腔内播種、ひいては浸潤転移を抑制する事ができると考えられる。今後、正所性移植モデルを有効に利用して腔内播種を抑制する薬剤を検討が必要と考えられた。
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