研究概要 |
虚血および高血糖の陰茎勃起に及ぼす影響を調べるために,オス白色家兎の1)両側内腸骨動脈部分閉塞による虚血モデルと2) alloxane単回投与による高血糖モデルを作成し,陰茎海綿体摘出標本を用いて薬理学実験をおこなった. 虚血モデルの陰茎海綿体では1)電気刺激による神経原性(NO作動性)弛緩反応の減弱(L-arginine前投与により回復),NOドナー(SNP)による弛緩反応は不変,2)電気刺激によるcyclic GMP産生の減少,3)内因性NOS阻害物質(L-NMA, ADMA)濃度の増加,4)NOS活性の減弱(L-arginine前投与により回復)を認めた.また対照群の海綿体弛緩反応は外因性投与のL-NMA及びADMAにより抑制された. 一方,高血糖モデルの陰茎海綿体では1)神経原性(NO作動性)およびNOドナー(SNP)による弛緩反応ともに不変,2)SNP刺激によるcyclic GMP産生の減少,3)内因性NOS阻害物質(L-NMA, ADMA)濃度の減少,4)NOS活性,gualylate cyclase活性は不変という結果であった. 以上の実験結果から,虚血に起因する陰茎海綿体弛緩反応の低下は、NOの産生量及び放出量の低下によるものであり,その原因として,1)内因性NOS阻害物質であるL-NMMA, ADMAの組織内での蓄積,2)NOS活性の低下が関与していると思われた。一方,高血糖では明らかな陰茎海綿体弛緩反応の低下はみられないものの,cGMP産生の低下や内因性NOS阻害物質の減少などNO-cyclic GMP系のいくつかの段階で変化が起こっていると思われた.
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