研究概要 |
1.覚醒下の正常および慢性脊髄損傷ラットの膀胱内にカプサイシンおよびレジニフェラトキシンを注入すると,膀胱充満に伴う反射性膀胱収縮を抑制する作用があり,レジニフェラトキシンは,カプサイシンよりも低用量でその効果が出現することが判明した.2.難治性の過活動膀胱を示す慢性脊髄損傷患者8名を対象に,カプサイシン2×10^<-3>M,100ml(5名)またはレジニフェラトキシン10^<-6>M,100ml(3名)を30分間膀胱内に注入する治療を行ったところ,両薬物はともに過活動膀胱を抑制し,反射性尿失禁および自律神経過反射を改善させた.これらの抑制効果はカプサイシン投与では2-3週後より出現するのに対して,レジニフェラトキシン投与では数日後より出現することが確認された.いずれの投与群においても抑制効果は少なくとも3カ月間持続しうることがわかった.特に問題となる副作用を認めなかった.3.(1)正常ヒト膀胱平滑筋のβ-アドレナリン受容体(β-AR)作働性弛緩は主にβ3-サブタイプを介して起こること,(2)神経因性膀胱患者より摘出した膀胱においても,正常膀胱と同様に主にβ3-ARを介して弛緩すること,(3)イタチの膀胱平滑筋のβ-AR作働性弛緩はヒト膀胱と同様に主にβ3-ARを介すること,および麻酔下のイタチにおいて,選択的β3-AR作働薬CL316,243の投与は心血管系に影響を与えることなく,膀胱弛緩を誘発しうること,(4)選択的β3-AR作働薬は,覚醒下ラットにおいて,心血管系に影響するここなく,脳梗塞に伴う過活動膀胱やプロスタグランディンE2の膀胱内投与によって誘発される過活動膀胱を有意に抑制しうることを明らかにした.以上の知見から,選択的β3-AR作働薬は過活動膀胱や低コンプライアンス膀胱に基づく膀胱蓄尿障害の治療薬として期待しうることが示唆された.
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