研究分担者 |
高橋 敦 札幌医科大学, 医学部, 助手 (20274946)
舛森 直哉 札幌医科大学, 医学部, 講師 (20295356)
伊藤 直樹 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (60193504)
国島 康晴 札幌医科大学, 医学部, 助手 (00315508)
笹村 啓人 札幌医科大学, 医学部, 助手 (50311890)
高橋 聡 札幌医科大学, 医学部, 助手
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研究概要 |
手術にて得られたヒト正常前立腺から間質細胞を分離しその培養系を確立した。免疫組織化学染色にて、smooth muscle actinの発現は認められたが、myosin, desminの発現は認められず、この細胞は筋線維芽細胞と考えられた。TGF-β receptor I, II mRNAの発現が認められたため、ヒトTGF-β1,2,3を種々の濃度で作用させたところ、いずれでもmyosin, desminの発現が確認された。すなわち筋線維芽細胞から平滑筋細胞への分化がTGF-βsにより誘導されることが確認された。一方、ヒト前立腺筋線維芽細胞の増殖に対するTGF-β1,2,3の影響に関しては、それぞれ量依存的に増殖を抑制する効果が確認された。ヒト前立腺平滑筋細胞のα1-receptorには1a,1b,1dのsubtypeが存在することが知られているが、筋線維芽細胞と平滑筋細胞でのそれらの発現の違いに関する報告はない。筋線維芽細胞と市販のヒト前立腺平滑筋細胞を用いて、1a,1b,1d subtype mRNAの発現をReal time RT-PCRにて定量化した。その結果、1aは平滑筋細胞のみで発現が認められ、1b,1dは筋線維芽細胞と平滑筋細胞の両者で発現が認められた。この所見は筋線維芽細胞から平滑筋細胞への分化の過程においてα1a receptor mRNAの発現がup regulateされている可能性を示唆するものであった。次に上皮・間質相互作用因子であるTGF-β1のα1 receptor発現に及ぼす影響を検討した。すべてのsubtype (1a,1b,1d)が発現している筋線維芽細胞と平滑筋細胞混合培養系を用いた。TGF-β1存在下(+)および非存在下(-)で培養しα1a,1b,1d receptor mRNAの発現をReal time RT-PCRにて定量した。また、[^<125>I]HEATを標識リガンドとして用いα1 receptorのbinding assayを行った。その結果、α1aの発現はTGF-beta(-)の細胞でのみ認めた。1b,1dの発現はTGF-β(+)でTGF-β(-)よりも、それぞれ0.13倍、0.09倍と有意に低い結果であった。また、[^<125>I]HEAT(300pM)の特異的結合量は、TGF-β(-)、TGF-β(+)の細胞でそれぞれ37.5および21.3fmol/mg proteinと後者で減少した。TGF-βsはヒト前立腺筋線維芽細胞を平滑筋細胞へ分化させることが明らかとなった。しかしその一方で、TGF-β1はα1 receptorの発現を抑制するという平滑筋の機能を脱分化させるものであった。これらの結果は前立腺間質細胞が形態学的分化と機能的分化に関して異なる調節を受けていることを示唆するものであった。
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