研究概要 |
1.黄体内のSODの低下がprogesterone(P)分泌に影響するかを検討した。細胞内Cu,Zn-SOD活性を低下させる目的で、ラットCu,Zn-SOD antisense oligonucleotideを黄体細胞浮遊液に添加し、hCGの存在下に48時間培養後、黄体細胞中のCu,Zn-SOD活性と培養液中のP濃度を測定し、さらにhoechst dyeによる核染色によりapoptosis細胞の割合を検討した。antisense(10μM)の添加によりCu,Zn-SOD活性とP分泌は有意に抑制された。尚、apoptosis細胞の割合には有意の変化はみられなかった。このantisenseによるP分泌抑制作用が活性酸素を介したものかどうかを検討するため、antisenseと同時に抗酸化剤であるN-acetyl-L-cycteineを添加したところ、antisenseのP分泌抑制作用は完全にブロックされた。すなわち黄体細胞中のCu,Zn-SODの低下は活性酸素産生をひきおこしP分泌を抑制することが明らかとなった。2.(1)胎盤性黄体刺激ホルモンが黄体をレスキューしその機能を延長させると共に黄体内のSOD発現を増加させるかを検討した。胎盤性黄体刺激ホルモンとして、妊娠12日目の胎盤を24時間培養して得られた胎盤培養上清を偽妊娠ラットの9日目から12日目まで腹腔内投与し、12日目の血中P値、黄体内SODの活性とmRNAレベルを測定した。胎盤性黄体刺激ホルモンの投与は黄体内のSOD発現及び血中P値を有意に増加させた。さらに、この胎盤性黄体刺激ホルモンのうち、testosteroneがestrogenに変換されなくても黄体に作用していることが明らかとなった。(2)ヒトの黄体についても検討したところ、妊娠黄体のCu,Zn-SOD発現は、黄体期中期のそれに比し、有意に高値を示した。また、黄体期中期の黄体をhCGで培養したところ、P分泌の増加と共に黄体内SOD発現も増加した。以上のことから、妊娠に伴う黄体機能の延長には、胎盤性黄体刺激ホルモンによる黄体内のSODの増加が関与していることが示唆された。
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