研究概要 |
上皮性卵巣癌におけるmicrovessel density(MVD), vascular cuffing(VC)およびvascular endothelial growth factor(VEGF)発現を免疫組織化学染色法で評価し、予後との関連について検討した。対象は1980年から1995年に当科で治療した上皮性卵巣癌105例について、抗CD34抗体、抗VEGF抗体を用いて兔疫組織染色をおこなった。MVDは染色された血管内皮が最も多い場所を弱拡大で探して、200倍1視野あたりの微小血管数として求め、1視野あたり70以上と70未満の2群に分けた。VCは微小血管が腫瘍胞巣を全周性に取り囲むように数珠状に配列する像を陽性とした。VEGF発現は腫瘍細胞の5%以上が染色されるものを陽性とした。それぞれについてprogression-free survivalとの相関について検討し、また年齢、進行期、組織型と各血管新生関連因子についてCox回帰解析法による多変量解析で予後因子を検討した。MVD値は21から244で中央値は77であった。VC、VEGF発現はそれぞれ陽性は31例、92例であった。I, II期ではMVD、VC、VEGFはいずれも予後良好な因子であった(各々P=0.003,0.077,0.005)が、III、IV期では予後との相関を認めなかった。I, II期症例について組織型別に解析すると、明細胞腺癌のみでMVDは有意に予後と相関した(P<0.0001)。多変量解析ではMVDと進行期、年齢が予後因子として見い出された。これらの結果より卵巣癌においても血管新生が予後に影響を与えていることが示され、卵巣癌の組織型により予後因子としての血管新生の意義が異なることが示され、血管新生が抗癌剤の局所の癌への移行に関与していることが示唆された。さらに子宮頸癌、子宮体癌の血管新生に関する成績から婦人科腫瘍において発生部位により血管新生の腫瘍の発育・進展への関わりが異なることが示唆された。 子宮頸部扁平上皮癌122例でHE標本を全て再検鏡して、臨床進行期、病理組織学的に浸潤の深さ、脈管侵襲の有無、リンパ節転移の有無、炎症細胞浸潤などについても詳細に検討した。CD34抗原を用いて血管新生の免疫染色を行い血管内皮を染色して微小血管を同定し、特に腫瘍の微小血管密度および腫瘍周囲の微小血管の囲い込み像(VC)と転移および予後との相関性について、リンパ節転移の有無ならびに生存率との関連を解析した。VCが全周性のものは16例、部分的に囲い込んだものは49例、認められないものは57例であった。全周性に囲い込んだ群は部分的に囲い込んだ群あるいは囲い込みのない群より有意に予後不良であった(P<0.011,P<0.0001)。また他の臨床病理学的パラメーターと合わせて多変量解析を行ない血管新生が独立した予後因子であるかの検討を行って、予後因子であることを明らかにし誌上に発表した。これらの腫瘍でも血管新生が発育、進展に関連していることが明らかになった。
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