研究概要 |
E_2の慢性投与は、血管に対して弛緩増強作用を有するが,これまでには内皮よりの弛緩物質放出を増加させると考えられていた。この研究では平滑筋の弛緩物質による弛緩反応そのものを増強していることを検証した.第一点として、その血管平滑筋における作用機序について検討した.日本家兎を卵摘し,2週ごとに安息香酸E_2を筋注したOVX+E_2群と生食水を筋注したOVX群とに分け,12週後に安楽死させて脳底動脈を摘出して実験に供した.内皮依存性弛緩物質による弛緩反応は,内皮健常標本でOVX+E_2群の50%収縮抑制濃度(IC50)10^<-5.45>Mに対し,OVX+E_2群のIC50は10^<-3.70>であった(P<0.05).NOドナーであるNOR1による内皮健常標本でのOVX+E_2群での弛緩反応はOVX群より大きく,内皮除去標本でも同様の結果であった(P<0.05).Carbacholによる弛緩反応の方がNOドナーより約3倍のOVX+E_2群とOVX群の間でのIC50値の差があり,これは内皮よりのNO放出の増強を反映しているものと考えられた.血管平滑筋におけるNOドナーに対する弛緩反応の増強はNOがcGMP産生を起こす過程またはNO消去にあると考えられた.第二点として、コレステロール食で飼育した家兎において胸大動脈・脳底動脈を用いて,血管機能(内皮依存性弛緩反応)と血管構造(内中膜の肥厚度測定)との相関について検討した.OVX群とOVX+E_2群では,OVX群において胸大動脈の内中膜はより肥厚しており,内皮依存性弛緩反応は障害されていた。脳底動脈においては内中膜の肥厚度の差はなかったが,OVX群の方が内皮依存性弛緩反応は障害されていた。以上よりE_2が血管に対する直接作用を有しており,血管の機能と構造の変化をもたらすと考えられた。
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