研究概要 |
血小板活性化因子(PAF)は、生物活性の強い脂質メディエーターであり、着床を始めとして様々な生殖現象に関わっている。受精卵からはPAFが産生され、その生育に必要であるとされている。受精卵の子宮内膜への侵入および脱落膜化に際して、子宮内膜、特に間質細胞において、受精卵由来のPAFがいかなる細胞間相互作用に関わっているかを明らかにすることを目的として研究を計画した。 子宮筋腫摘出時に採取された子宮内膜を細切後,0.25% collagenase処理し,遠心し,その後60μmメッシュを通過させて間質細胞を分離した。得られた間質細胞を10% FCS加 PRM1の培養液で2×10^5cells/wellづつ培養した。 PAFアゴニストであるcarbayl-PAF(C-PAF)を上記の培養系に濃度的、時間的変化を加えて添加し、その培養上清中のinterleukin(IL)-6,IL-8,macrophage colony-stimulating factor(M-CSF), macrophage inflammatory protein-1α(MIP-1α)およびtumor necrosis factor-α(TNF-α)をELISAを用いて定量し、また、これらのmRNAの発現量を分子生物学的手法を用いて検討した。 C-PAFは,子宮内膜間質細胞のIL-6,IL-8,M-CSF, MIP-1α,TNF-αの産生を濃度依存性に促進した。また,これらのサイトカインのうち,IL-6,IL-8のmRNAの発現もPAF刺激により促進された。 以上の結果から,受精卵由来のPAFは,PAF受容体を介して子宮内膜間質細胞からのIL-6,IL-8,M-CSF, MIP-1α,TNF-αの産生を促進することにより,これらのサイトカインネットワークを介して着床や妊娠の維持に重要な役割を担っていることが示唆された。
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