研究概要 |
血管新生は,固形腫瘍の増殖・転移において必要不可欠な現象の一つである.子宮肉腫は血管新生に富み,かつ脈管侵襲が高率に認められ,婦人科腫瘍のなかで最も悪性度が高い腫瘍である.また,子宮肉腫の多くは各種制癌剤や放射線に対してほとんど感受性を示さないため,予後は極めて不良である。そこで,血管新生を標的とした治療が新しい癌治療の戦略として注目されており,本研究にて子宮肉腫に対する血管新生抑制療法の基礎実験を行った.我々が既に樹立した子宮癌肉腫株(FU-MMT-1)を用いて血管新生阻害剤であるTNP-470(Asper gillus fumigatusからの抽出物・Takeda Chemical Industries,Ltd.)の増殖抑制能および血管新生抑制能をin vitroおよびin vivoで調べた.増殖抑制能に関しては,in vitroではMTT assayを用い,in vivoでは異種移植系を用い検討した.さらに,培養上清中の血管新生促進因子であるvascular endothelial growth gactor(VEGF)の産生能をELISA法で測定し,対照群と比較検定した.VEGFに関しては,in situ hybridizationにてmRNAの発現を調べた.その結果,TNP-470はFU-MMT-1細胞に対しての増殖抑制効果をin vitroかつin vivoで示した.また,VEGFはTNP-470によって濃度依存性に抑制された(ANTICANCER RESEARCH20:601-604;2000).In vivoでのin situ hybridizationによる評価法により,VEGF-A mRNAはTNP-470治療群において発現の減少が認めらた.以上の結果より,子宮肉腫に対するTNP-470を用いた血管新生抑制療法の有用性が確認されたため,今後更なる評価を行う予定である.
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