研究概要 |
気道(特に上気道)の好酸球性炎症における好酸球浸潤には、浸潤細胞よりも構築細胞(上皮細胞や線維芽細胞)が産生するケモカインが重要な役割をはたしているのではないか、ということから今回の実験は行われた。IL-1,TNF-αにより気道線維芽細胞からRANTES, eotaxinなどの強い好酸球遊走因子が産生された。また,LPS(Lipopolysaccharide)の刺激によってもRANTESが産生された。その産生量は比較的多かった。また、気道線維芽細胞のLPSに対する反応性は、鼻・副鼻腔における線維芽細胞に特徴的な反応であった。これらの結果から気道好酸球性炎症における好酸球浸潤に、線維芽細胞からの好酸球遊走因子が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また上気道においては、LPSの刺激によりRANTES産生がみられたことから、細菌感染によっても線維芽細胞から好酸球遊走因子が産生されることにより好酸球浸潤がおこる可能性が示唆された。このことは、慢性副鼻腔炎において、なぜ好酸球浸潤が鼻・副鼻腔粘膜に浸潤するかを考えるにあたり、重要な反応と考えられる。現在、IL-4やIL-13などのTh2型サイトカインに対する線維芽細胞からの好酸球遊走因子産生の誘導、Th1とTh2のサイトカインの混合刺激で線維芽細胞からの好酸球遊走因子の産生がどう変化するかについても実験が進行している。 この他の実験で、DEPによる鼻茸組織からの好酸球遊走因子の産生、好酸球遊走に重要な接着分子の発現をみる実験を行ったが、好酸球遊走因子の産生や接着分子の発現増強はみられなかった。
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