研究概要 |
抗癌剤治療の今後の方向性は癌の多様性と個々の癌の個性に応じたオーダーメイド化学療法である。この過程の中で、感受性の予測と併用化学療法の開発が課題である。この課題に対し、頭頸部癌を対象に(1)in vitro感受性試験(Histoculture Drug Response Assay、HDRA)と(2)遺伝子発現解析(RT-PCR法)による感受性、さらに(3)併用化学療法の検討を行った。(1)対象はCisplatin(CDDP)/5-FU併用療法を行った頭頸部扁平上皮癌33症例。CDDPは20μg/mlの濃度、5FUは120μg/mlの濃度にて腫瘍発育阻止率50%で判定した。33例の抗癌剤治療に対する臨床奏効率は51%。CDDPは33例が評価可能で、真陽性率78%、真陰性率80%、正診率79%であった。5FUは11例が評価可能で、真陽性率50%、真陰性率80%、正診率64%であった。HDRAではCDDPと5FUともに真陰性率が高く、無効例の判定に有用であった。また、両者の判定結果を組み合わせることにより、多剤併用療法においても無効例をより正確に判定できることが明らかとなった。(2)5FUとCDDPの効果規定因子と考えられるチミジル酸合成酵素(TS)、ジヒドロピリミジン脱水素酵素(DPD)、グルタチオンS-転移酵素(GST)πが頭頸部癌での抗腫瘍効果を予測する因子になり得るか検討した。頭頸部癌患者28症例を対象に、TS,DPD,GSTπはGAPDHを内因性コントロールとして半定量的にRT-PCR法にて評価した。5FUの感受性とDPDmRNAの発現との間には負の相関を認めた。5FUの感受性とTS、及びCDDPの感受性とGSTπについては相関しなかった。頭頸部癌の5FU系抗癌剤投与における抗腫瘍効果を予測する上でDPDmRNAの発現は、その一因子になり得ることが示された。(3)機能温存とdownstageを目指して、5FU先行のCDDPとの併用化学(FP)療法(5FU600mg/m^2/day,day1-6,CDDP80mg/m^2/day,day7)を26例の中・下咽頭癌症例に行い、22例、85%にPR以上の効果を認めた。FP療法の治療効果の高さと本療法による治療選択の意義が示された。
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